M&Aアドバイザリーが実施するDDプロセスの全体像
DDは、主に以下のようなプロセスで進めていくことになります。
1.DDの領域を決定する
デューデリジェンス(以下、DD)を実施する際は、まず調査対象とする領域を決めることが重要です。買収の背景や重点的に確認したい調査項目について、専門家と事前に共有・議論する作業から始めると良いでしょう。これにより、専門家は幅広い分野に対応しつつ、買い手のニーズに応じた調査が可能となります。

DDには、会計や税務、法務といった基本的な調査項目(財務DD、税務DD、法務DD)がほぼすべてのM&Aで実施されますが、状況に応じてビジネスDD、環境DD、ITDDなども追加される場合があります。それぞれの調査範囲をどこまで行うのかは、対象会社の業種や管理体制を考慮し、専門家と相談した上で決定されます。
2.DDのキックオフを行う
調査範囲が確定したら、買い手企業、各DDの専門家、フィナンシャルアドバイザーが集まりキックオフミーティングを実施します。この場で、専門家が自己紹介を行い、買い手企業が把握しているリスクや、専門家が想定しているリスクについて意見交換を行います。これにより、対象会社に対するリスク認識をすり合わせが可能です。
また、ミーティングではDDのスケジュール確認も重要なポイントとなります。具体的には、中間報告の日程や資料のやり取り方法が共有されます。一般的にDDにかかる期間は約1か月ですが、案件によっては2~3週間と短期間で進行することもあるでしょう。特に資料が十分にそろっている場合や小規模な会社を対象とする場合は、短期間で対応可能です。ただし、規模が大きい場合や検討すべき事項が多い場合には、調査対象を絞ることもあるでしょう。
3.キックオフ後のDD開始と調査手法
キックオフミーティングが完了すると、DDが本格的にスタートします。専門家は必要な資料リストや質問リストを作成し、買い手企業やフィナンシャルアドバイザーを通じて対象会社に提出。これにより、必要な資料や回答を収集します。
さらに、一定期間が経過した後、対象会社に対してインタビューを実施します。このインタビューは主に2種類に分かれます。1つは、経営陣に対するインタビューで、ビジネスの全体像や戦略について把握するためのものです。もう1つは、実務担当者や外部専門家に対するインタビューで、各領域の実務的視点からより詳細な情報を得るためのものです。これにより、資料だけでは分からない部分や確認事項の裏付けを行います。
DDを進める過程では、専門家と密なコミュニケーションを取ることが不可欠です。随時の連絡に加え、定期的なミーティングを設定することで、スムーズな情報共有と調査の進行が期待できます。
M&Aアドバイザリーを選ぶ際のDD専門家の見極め方
M&A取引において、デューデリジェンス(DD)は成功の鍵を握る重要なプロセスです。そのため、DDを実施する専門家を選ぶ際は、慎重に検討しましょう。以下では、M&Aアドバイザリーを選ぶ際に押さえておくべきDD専門家の見極めポイントを解説します。
専門知識と実績の確認
DDの専門家を選ぶ際には、まず専門知識と過去の実績を確認しましょう。DDには会計、税務、法務、ビジネス、環境、ITなど複数の分野が含まれます。それぞれの分野で高度な専門知識が求められるため、候補となるアドバイザリーがこれらの領域を網羅的にカバーできるか確認する必要があります。
