PMI戦略の立案における専門家の役割
PMIは、買収後の企業文化の統合や組織運営の最適化を含む複雑なプロセスであり、成功の可否がM&A全体の成果に影響します。この重要なプロセスにおいて、専門家が果たす役割とは何でしょうか。
今回は、PMI戦略の立案における専門家の役割とその重要性について解説します。
PMIにおける専門家(アドバイザリー)の必要性

世の中には、M&Aが失敗してしまうケースもあります。その背景には、PMIプロセスにおける課題も関係しているといえるでしょう。
買収後の企業では、異なる企業文化や業務プロセスが融合する難しさがあり、これに適切に対応できないと、期待したシナジー効果を得られません。こうした課題に直面する中で、専門家の介入が重要となります。
専門家の役割
PMI戦略の立案において、専門家は次のような役割を果たします。
◆組織文化の統合支援
異なる企業文化を持つ買収元と買収先の文化を統合するには、徹底した分析と計画が必要です。専門家は従業員調査やインタビューを実施し、双方の文化的な違いや共通点を特定します。その上で、両社が協力しやすい新しい文化の形成を支援。これにより、従業員のモチベーション維持や離職防止が期待できます。
◆シナジー効果の最大化
M&Aの目的は、単なる統合ではなく、収益増加やコスト削減といった具体的なシナジーを得ることにあります。専門家は業務プロセスや財務構造の分析を基に、どのように統合を進めるべきかを具体化します。
◆法務・財務のリスク管理
M&Aでは、法務や財務に関するリスクがつきものです。PMIプロセスでも、契約条件の確認や税務面での対応が求められます。専門家は法務や財務の知識を駆使し、統合後のリスクを最小限に抑える支援を行います。
◆長期的な統合計画の策定
PMIは短期的な業務統合だけでなく、中長期的な視点も求められます。専門家は、買収企業が今後どのように成長していくべきか、またそのために必要な統合のロードマップを策定します。
PMIにおけるコスト削減の戦略と実践
PMIの中でも、コスト削減は統合後の企業価値を高めるための主要な戦略の一つです。こちらでは、PMIにおけるコスト削減の具体的な戦略と実践方法について解説します。
PMIにおけるコスト削減の重要性
PMIは、単なるコスト削減の場ではなく、両企業のシナジー効果を最大化するプロセスです。

しかし、M&Aの成功要因を支えるのは健全な財務基盤であり、そのためには無駄なコストを削減し、経営資源を効率的に活用することが欠かせません。コスト削減は、統合後の収益性を高めるだけでなく、利害関係者に対しても統合の意義を示す重要な指標となります。
コスト削減の主要な戦略
◆重複業務の整理
PMIでは、買収先と被買収企業の間で重複する業務や機能を見直すことが不可欠です。例えば、バックオフィス(人事、経理、ITなど)の統合が挙げられます。同じ機能を持つチームやシステムが複数存在する場合、どちらかを削減または再配置することでコストを削減できます。
◆施設・設備の最適化
PMIでは、各企業の拠点や設備を見直し、統廃合を進めることがポイントです。オフィスや工場、倉庫などの物理的な資産を適切に統合することで、維持管理費用を削減しつつ、生産性を向上できます。
◆人員の最適化
人員削減は、慎重に行うべき領域です。重複するポジションや業務がある場合、役割を再定義することでコスト削減を図れるでしょう。退職勧奨や早期退職制度などを活用し、ソフトランディングを目指したアプローチが求められます。
コスト削減を成功させるための実践ポイント
◆データに基づく分析
PMIにおけるコスト削減は、感覚や直感だけではなく、データに基づいた分析が求められます。財務データや業務プロセスに関する詳細な情報を収集し、可視化することで、どの領域で削減が可能かを明確にします。
◆各部門との緊密な連携
コスト削減には、各部門との連携が不可欠です。現場の意見を反映し、実務レベルでの実現可能性を考慮した計画を立てることで、実行段階での混乱を防ぎます。
◆従業員の理解と協力
コスト削減施策が従業員に与える影響を最小限に抑えるためには、透明性のある情報共有が重要です。施策の目的やメリットを十分に説明し、従業員からの信頼を得ることが、成功への鍵となります。
PMIプロセスの流れを理解する:基本ステップとその重要性
PMIプロセスの流れ
◆1.M&Aの方針を定める
PMIを進めるにあたり、M&Aの全体的な方向性を明確にすることが求められます。どのような手順で進行し、どのようなスキームを採用するのか、またどの程度の期間でプロセスを完了させるのかを具体的に検討する必要があります。
◆2.統合計画を定める
クロージング後に実施する計画である統合計画を立案します。この計画は、通常3~6ヶ月以内に実行されるもので、両社の事業面・管理面に関して具体的な見直しを行います。事業面の見直しには原価や販売費の調整、管理面では組織構造や人事、経理などの見直しが含まれるでしょう。
◆3.100日プランを作成する
統合方針と計画を基に、クロージング後100日間で取り組む具体的なプランを策定します。このプランでは、短期的な課題解決と中長期的な経営目標の達成を目指します。特に初期の100日間では、緊急性の高い課題に対応し、その後の運営基盤を築くことが重要です。また、現場担当者の負担を考慮した現実的なスケジュールを構築することも大切です。
◆4.M&Aを実施する
100日プランに沿って統合プロセスを実行します。実施段階では、プランに基づく施策を具体化し、KPIを活用して進捗をモニタリングします。企業ごとに優先すべき課題は異なるため、計画の柔軟な見直しと、担当者の当事者意識の醸成が成功の鍵です。
◆5.ディスクローズを行う
取引後、関係者に向けて適切な情報開示を行います。この際、秘密保持契約を遵守しつつ、タイミングや方法に配慮が必要です。売り手企業の従業員には、雇用に対する安心感を伝えるとともに、新たな成長のビジョンを共有します。一方で買い手企業の従業員に対しても、M&Aの目的や今後の展望を説明し、理解を 得ることが重要です。
◆6.効果検証・フォローアップを実施する
統合計画や100日プランの進捗状況を確認し、期待される効果が実現されているかを検証します。必要に応じて改善策を講じ、長期的な成長に向けた方針を再構築します。また、買収後の関係性や統合の進捗を定期的に確認し、企業価値のさらなる向上を目指しましょう。
PMIプロセスの重要性
PMIは、M&A成功の鍵を握る重要なプロセスです。M&Aは、単なる法的手続きや契約の締結で終わるものではありません。むしろ、買収後の企業統合こそが、M&Aの目的を達成するための本質的なステップとなります。PMIが適切に行われることで、シナジー効果が最大化され、企業価値が向上するでしょう。
PMIが不十分である場合、買収元企業と買収先企業との間で文化的な摩擦や運営の不整合が生じる可能性があります。これにより、従業員のモチベーション低下や業績への悪影響が生じてしまうかもしれません。
一方で、PMIが効果的に進められれば、両社のリソースを最大限に活用し、組織の強みを強化できます。
また、PMIは単に短期的な統合を目指すだけでなく、中長期的な経営戦略を支える基盤を築く役割も担っています。統合プロセスを通じて、コスト削減や効率向上、新しい成長機会の創出など、企業全体で一体感を醸成しながら持続的な発展を目指すことが可能です。
このように、PMIの成功はM&A全体の成果を左右するため、計画的かつ慎重に取り組むことが求められます。
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M&AとPMIの専門アドバイザリーはD3 Management
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